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「いつかパラソルの下で」

「いつかパラソルの下で」_f0119179_2211693.jpg今年3冊目に読んだのは森絵都の「いつかパラソルの下で」。森絵都の小説は昨年の「アーモンド入りチョコレートのワルツ」以来2冊目。前作が子供から大人になる時期の印象的なエピソードを綴った作品だったので、今回もタイトルからして大人のメルヘン的な作品かと思ったら、描かれていたのは冒頭から「達郎には噛み癖があって・・・」で始まるリアルな日常。異常に厳格な父に育てられた3人の子供達は、父の一周忌を前に父に愛人がいたことや有名な淫乱男だった祖父の存在を知って愕然とするんですが、「暗い血」におびえる父の過去を探る前半はなかなかドラマチックでした。
姫野カオルコの「ドールハウス」も強権的な父からの決別が描かれていたけれど、反発しながらも親の呪縛から逃れられずに苦しんでる子が、自分も含めて周りに結構いたりするので、親子の抑圧された関係は繰り返して描かれるべきテーマだと思います。でもこの作品には「ドールハウス」のような息苦しさはなくて、肩の力が抜けているところが好き。なので読後の印象がとても温かいんです。今年出会った3冊は、どれも読んでる時間が心地良い。そうそう、噛み癖のエピソードは途中にも出て来ます。実家に帰った主人公の野々が自分のふくらはぎに残る恋人の歯型を見て、「達っちゃん」なんて思いながらにやけた顔でその痕を指先で撫でたところを兄に見られて、うろたえるというもの。このエピソード、なんか好きです☆
by mmcmp | 2010-01-30 03:48 | カフェ読書 | Comments(0)
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