人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「本所しぐれ町物語」

「本所しぐれ町物語」_f0119179_071855.jpgいろんな作家の小説を読んでみては、時々藤沢周平の作品を手にしたくなります。やっぱりモモ母にとって一番好きなのは「蝉しぐれ」で、それを超える作品はおそらくないだろうとは思うものの、彼が描く人物達の情感に触れて、日本人って良いな・・なんて思いたいんですね。
今回読んだのは「本所しぐれ町物語」。江戸の架空の町に暮らす人々を描いた連作で、前回の主役だった人物が次の回では脇役として登場したり、節目節目に小間物屋の若旦那の浮気話が挿入されたりするユニークな構成。最初の章はさあこれからと言ったところで話が終わった感じがして、え?大した事件もないまま終わるの?と少々拍子抜けしたけど、大事件ってそうそう起きるもんじゃない。昔の刑事ドラマみたいに管轄内でばかり凶悪犯罪が起こっていたら、物騒で市民は暮らしてられないですよね。描かれるのは大事件ではなく、ちょっとした騒動。特別突出した人物がいるのでなく、子どもから表店の主人、ご隠居といった面々の心の機微がじんわり染みてくる。泥棒も出て来るけど、病の妹の薬代を得るための犯行というのが藤沢作品らしい。でも、こういう作品を良いと思えるのは、それだけ年をとったということかも。学生時代に読んでいたら竜馬や以蔵みたいなインパクトのある話でないと退屈したかも知れません。何が良いと思えるかって年齢も大いに関係しますね。
by mmcmp | 2010-09-08 00:56 | カフェ読書 | Comments(0)
<< 最終日にようやく・・・ 初めての美味しさ☆ >>