「鍵」

f0119179_18182290.jpgアンの友達」の次に読んだのは、アンとは対照的な谷崎潤一郎の「鍵」。棟方志功展での挿絵の原画が印象的だったので、是非棟方の挿絵でと思い、中公文庫を探しました。
お恥ずかしい話ですが、モモ母は谷崎で卒論を書いておきながら、「鍵」は読んでませんでした。K教授、スミマセン!膨大な作品があるので、日常から隔絶された世界を構築するというテーマからはちょっと外れると思うのは後回しにしたんですよね・・・。でも、今読んで良かった。多分、学生の頃に読んでいたら、変態オヤジと貞淑そうで実は淫乱な妻を描いたエロ小説としか思わず、好きになれなかっただろうと思います。いや、実際は極上の心理小説で、日常の裏に潜む欲望を見事に描いた魅力的な作品。さすが谷崎と改めてその筆力に感服しました。それに高齢化が進んだ今の時代だからこそよりリアルに感じる面もあって、こうした小説を昭和30年代に書いていたと思うと本当に凄い。前半は大学教授と妻の2つの日記からなり、夫も妻も相手の日記は読んでいないと書きながら、実際は読みあうことを期待していて、互いの心を探りあい、騙しあい、挑発しあう緊迫感で、息苦しくなるほど。後半は妻の日記によるいわば種明かし。その告白は読者のほぼ想像通りだけど、さすがにそこまで狡猾だったとは・・・というところもあり、ミステリーとしても楽しめます。冷めた見方をすれば明らかに夫はオバカさん。でも当人はなんと幸せだったことか・・・。今、この作品を読ませてくれた棟方展に感謝です。ほかの谷崎作品も読みたくなりました。
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by mmcmp | 2010-10-29 19:05 | カフェ読書 | Comments(0)
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