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「フィッシュストーリー」

「フィッシュストーリー」_f0119179_2552045.jpg井坂幸太郎の「フィッシュストーリー」を読みました。井坂幸太郎って「重力ピエロ」の人だよね・・・くらいの予備知識で読み始めたので、「サクリフィス」の黒澤が井坂作品ではお馴染みのキャラだなんて知らなかったし、「フィッシュストーリー」が映画化されてたことも後から知りました。
初の井沢作品は技巧的で男性の書く文章だなぁなどという印象。「動物園のエンジン」では語り手の間に「彼」の言葉が入れられいるし、「フィッシュストーリー」は時系列でなく20数年前、現在、30数年前、10年後の順で綴られています。この表題作がとても好きでした。売れないロックバンドの最後のレコード。時流に乗れないけれど、やりたいことを貫いてきた自分達の思い、誰かに届けよ・・・という無音のメッセージが、長い時間をかけて伝わり、やがて世界を救うという寓話的な作品。ちょっとしか出てこないけど、正義の味方になれと言われて育った瀬川が、とっても強烈。「正義」の危うさを自覚してるところも良いし、正論を言うことが疎まれたりする今の世の中、見た目格好良いヒーローはいても、正義の味方っていないなぁと思う。その一方で、表立っては言わないけど、正義を信じてるからタイガーマスク現象なんかが起きるのかも知れないし、NZ地震被災者の救出に向かったハイパーレスキュー隊なんてのは、地味だけど正義の味方に見える。うん、世の中、正義って大事よねと思う。でもそれを肩に力を入れずにサラッと表現して「フィッシュストーリー」(ほら話という意味)なんてタイトルつけるあたりが憎い。誰かかの思いは誰かに届き、届いた人の心をちょっとだけ動かし、人を動かす力となって世界が動く。世界は救えないけど、モモ母のささやかな思いも時空を越えて届くと良いなと、思いを新たにしました。
by mmcmp | 2011-02-27 03:51 | カフェ読書 | Trackback | Comments(0)
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