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「無事、これ名馬」

「無事、これ名馬」_f0119179_15433315.jpg昨年12月に読んでいたのが宇江佐真理の「無事、これ名馬」。江戸の火消し「は組」のかしらである吉蔵のところに武家の息子、たろちゃんこと太郎左衛門が「男の道を教わりたい」と弟子入り志願。剣術の試合には勝てないけれど、品行方正で心優しいたろちゃんが主人公といえば主人公なんだけど、話は寧ろ吉蔵を軸に、娘のお栄や頭取りの金次郎などの町人たちの日常が描かれていて、時代ものではあるけれど、ハラハラするような劇的な場面はなし。そのあたりが女性らしいかなと初めての宇江佐作品を読んで思いました。どちらも一作ずつしか読んでないけど、澤田ふじ子より宇江佐真理の文章の方が好みかな。
「無事、これ名馬」は剣術も学問もイマイチだれど、大した病気もせず、人と喧嘩して傷を負ったこともなく、今後も平凡ながら幸せな人生を送るだろうたろちゃんを駄馬という人もあるだろうけど、親にとってはかけがいのない名馬だという父の思いをタイトルにしたもの。みんながみんな無難に生きたんじゃ面白くないけど、真面目に生きることがダサい、はみ出すことが格好いいというのは違うよね、と思う。真面目でいいじゃん。金次郎が剣術をしこんでいたという泣かせるエピソードも交えて、意気地のないたろちゃんに最初は苦笑していた吉蔵にとっても、かけがえのない存在になっていたはず。どの人生も素晴らしいと思うのでした。
by mmcmp | 2013-01-08 16:17 | カフェ読書 | Comments(2)
Commented by こむぎん at 2013-01-08 20:06 x
初・宇江佐真理、いかがでしたか^^
モモ母さんのおっしゃるとおり、ハラハラドキドキではないけれど、
生活の『匂い』があるんですよね、お話の中に。
よく藤沢作品は景色がありありと浮かんでくると評されてたりしますが
宇江佐作品はお腹が空いてくるような匂いがする、と思います。
・・・私が単に食いしん坊なんですけどね。
Commented by mmcmp at 2013-01-09 01:35
ドラマチックではないけれど、認知症の女性を登場させたり、日常のリアルさがある気がしました。澤田さんの作品はちょっと解説がくどい感じがしたんですが、そういうのがなく読みやすかったです。
たろちゃんのお父さんが主人公の作品もあるようですね。機会があれば読んでみたいです。
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