小池真理子の「夜の寝覚め」を読みました。小池真理子は初めて読んだ「
無伴奏」と次に読んだ「恋」がすごく好きだったんですが、その後は今ひとつ好きになれなくて、昨年読んだ「蜜月」もうーん・・・という感じ。なので暫く読んでなかったけれど、これは表紙にひかれて読んでみました。
6人の女性を主人公にした短編集。40代になって若い頃の恋愛を振り返る女性、長年続けてきた関係が終わろうとしている女性、再婚を決めた女性もいるけれど、どの主人公も歩んできた先にあるものが見え始めていて、このまま終わってしまうのか・・という不安感から浮気に走ったりするワケで、それは男性も同じかも知れません。ただ、女性の方が思い出好きなのかも。話の筋は見えているけれど、「雪の残り香」というかつて愛した男性への手紙の形式で綴られる作品が一番印象的でした。雪深い温泉町での7歳年下の男性との思い出。積もったばかりの新雪に長く残される二人の足跡を眺めるのが好きだった響子。小池真理子の情景描写はどれも素敵だけれど、この作品は特にドラマチック。響子の語りなので、文体が常体になったり敬体になったりするんですが、それが逆にリアルだったりします。同じく雪の夜に展開する「時の轍」は、お人好しの夫に同情してしまって、好きになれませんでした。