鈴江敏郎と二口大学による演劇ユニット「昼ノ月」の「顔を見ないと忘れる」を観に、人間座スタジオに行きました。鈴江氏の芝居を初めて観たのは、彼がまだ京大で劇団その1をやっていた頃。大学時代に下北沢に住んで、紀伊國屋ホールや本多劇場、スズナリなどで芝居を観ていたモモ母には、当時の京都の劇団はどうもマンガみたいな感じがしたのですが、鈴江作品はすごく良かった。でも、戯曲に演出や役者がついていってないもどかしさみたいなのを常に感じていました。で、岸田戯曲賞やシアターコクーン戯曲賞なんかを受賞して、蜷川演出で上演されたりして、ついに彼も東京進出してメジャーになるのか!と思いきや、それを拒否するかのように関西にこだわり続けて、勿体ないなぁと思いながら、芝居を観る機会が減っていました。
久々に観た鈴江作品は、客席から作り上げるこだわりよう。観客が見下ろすすり鉢の底のようなステージでは、窃盗癖のある夫と面会に来た妻の会話が、刑務所の実態を盛り込みながら繰り広げられます。知名度はあるけど舞台経験の少ない役者を多用し、上演時間3時間以上で1万円近い芝居が増える中、1時間5分で前売1200円というのも彼の現状に対するアンチテーゼなのかな?観ていて、ああ、彼はこういうのがしたかったんだな、と納得でした。ただ、戯曲、演出、舞台美術、男優が良かっただけに、さらに力のある女優さんで観てみたい。深津恵里なんか良いと思うけど・・・。