2011年最初に読んだ小説は森絵都の「つきのふね」。この手の児童文学をYAものというんだそうですが、大人が読んでも面白い作品が結構多いですね。10代の頃にこうした作品を読むとその後の生き方にも少なからず影響を与えそうです。万引き事件をきっかけに親友の梨利と距離が出来てしまったさくら。助けてくれた智さんは精神を病んでいて人類を救うために宇宙船の設計図作りに没頭していく。梨利や2人を追い回す勝田くんも不安や悩みを抱えている。さくら達が万引きしたスーパーのへぴ店長も巻き込んで、物語はクライマックスに向けてぐいぐい読者を引っ張っていきます。
「あたしはちゃんとした大人になれるのかな、ちゃんと生きていけるのかな、未来なんて来なきゃいいのに-」ノストラダムスの大予言を恐れていた梨利がこわかったのは、本当は自分だったんですね。思春期の不安は誰もが抱くことだけど、ちゃんとした大人にならなかったモモ母は、気がつくと智さんのようにうまく生きていけない人が世の中にあまりに多いことに驚かされます。でも、うまく社会生活が送れてるちゃんとした人達がもっとちゃんとしていたら、今の日本はこんなにはならなかったのではないかと思います。自分自身も含めて現代を生きる一人一人が少しずつ軌道修正する勇気を持てば、もうちょっとちゃんとするのではないかと。ただ、それは難しいことなのかも知れません。万引きは許さないけど必要に迫られれば産地や賞味期限の偽装はやってしまうへび店長は言うんですよね、「人間、よくなるより悪くなる方が楽だもんな」。この作品を読んで、もうちょっとだけちゃんとしようと思ったモモ母でした。