大崎善生の「ディスカスの飼い方」を読みました。熱帯魚飼育が趣味の男性は彼の小説に繰り返し登場するので、またか・・と思うけど、これはタイトル通りに熱帯魚ディスカスを飼うために必要な作業が詳細に綴られた不思議な恋愛小説です。恋人より熱帯魚を愛するようになってしまったために、恋人は皆、彼の元を去って行く。彼女の立場からすれば当然ですね。熱帯魚に嫉妬する状況は酷だし、餌にする赤虫の塊が入った冷凍庫で作られた氷を使うのは嫌。でも、男性の気持ちはすごく理解できる。
ディスカス飼育でなくいも良いのだと涼一は言います。何かを理解することで、思ってもいなかった何かを手にすることが出来る。理解できないものにアプローチしようとする根源的な欲求。ディスカスの前にオムライス作りにはまった涼一は、書店に卵料理関係の本がたくさんあることや食料品売り場の卵の品揃えが異常なくらい豊富なこと、調理器具コーナーに本に掲載されているフランス製の調理器具がほとんど揃っていることなど、オムライスに興味を持つまで気づかなかったいろんなことに気づく。そのワクワク感は手に取るようにわかります。「何かを知るということは、それ以前とは違う人間になっているということである」という一行は激しく共感。妙な道具や薬に頼るよりシンプルな方程式を作りたいという考えも頷けます。でも、彼がオムライス作りに没頭するきっかけは、卵料理店でオムライスを食べながら、自分でやればもっと上手に出来るのではないかと、ふと思ったこと。モモ母、そんなこと絶対思いませんね。プロが作る方が断然美味しいと思う。だから道を究められないのか・・・と思い知ったモモ母です。