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「冬虫夏草」&「家守綺譚」

「冬虫夏草」&「家守綺譚」_f0119179_232425.jpg読みたいと思っていた梨木香歩の「冬虫夏草」を漸く入手しました。大好きだった「家守綺譚」の続編です。亡き友・高堂の家に住む綿貫が著述したものという設定は同じですが、前作が家の周辺で起きる出来事を綴ったのに対して、今回は姿を消した犬のゴローを探して山中を往く旅行記的な内容です。「イワナの宿」に行くのも旅の目当てのひとつ。「イワナを食べさせる宿」でなく、「イワナの夫婦が営む宿」というのがいかにもこのシリーズらしい。河童や天狗が登場する泉鏡花にも通じる不思議な世界ですが、絢爛豪華な怪異譚の鏡花と違って、近江から鈴鹿に向かう地味でもっと生活に根ざした現実と非現実の狭間のお話。東近江の愛知川流域を進む道中で立ち寄る神社やその由緒は作者の創作かと思ったら、ちゃんと実在してるのが驚き。郷土史などを丹念に取材されたんですね。
汽車の中で出会った婦人の服装を見て、「隣りのおかみさん着た例しも着る予定もない類のものだとぼんやり思った」という記述があり、えっとおかみさんてどんな人だっけと思って「家守綺譚」も再読しました。犬のゴローは綿貫征四郎の次は「征五郎」だから略してゴローと掛け軸からやってきた高堂が名付けたこととか、すっかり忘れてまし「冬虫夏草」&「家守綺譚」_f0119179_3145261.jpgた。2作ともツリガネニンジンだのヒヨドリジョウゴだのと植物の名前が各章のタイトルになっていて、どんな草花なのかとGoogleで画像検索しながら読むのも楽しかった。疎水近くにあるという高堂の家は吉田山や南禅寺が出てくるから鹿ケ谷にある白砂村荘みたいなイメージで読んでたけど、「冬虫夏草」の記述から山科の設定でした。100年程前の京滋にありそうな幻想の世界。またいつか読み返したくなると思います。
by mmcmp | 2018-10-05 03:22 | カフェ読書 | Comments(0)
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