三浦しをんの「君はポラリス」を読みました。恋愛小説集で、表題作があるのかと思ったらそうではなく、最初と最後以外は全く別のテイストの短編集でした。大学卒業後、家業を手伝いながら密かに亡くなった恩師の骨を持っている「骨片」、夫が水族館で後輩に再会してから、自宅マンションに後輩が出入りするようになる「ペーパークラフト」、突然ロハスな暮らしに目覚める「優雅な生活」など、人それぞれの恋愛の形が綴られていて楽しい。友人の結婚式で出席するたびに、僅かに覚えた違和感、無難な相手と適齢期と言われる年齢で結婚することに美を見出さなかったけれど捨松といると違和感がないという「森を歩く」のうはね。謎だった捨松の職業を探る結末はなかなか素敵でした。
「裏切らないこと」の岡村の妻子への思いはイマドキの夫だなあと「
道草」の健三との違いが際立って、印象に残りました。息子のペニスを舐める妻の姿を見てしまい、戸惑うけれど「息子を持った母親はたいていしてみるんじゃない?」と同僚に言われるエピソードが出産経験のないモモ母には面白かった。変なことと普通のことの境目ってかなり曖昧なんですよね。そして一番好きだったのが「春太の毎日」。腹痛から嘘のように快復した春太が「麻子が生きて幸せでいる限り、何度でもあたたかい春はめぐってくるんだよ」というラストは「
あの家に暮らす四人の女」のラストにも通じる、愛おしさがありました。今年の桜も終わるけど、来年もむぎちゃんと一緒に見たいなぁと思う。理由は「春太の毎日」を読むとわかります。