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「スペードの3」&「ふくわらい」

f0119179_1445031.jpg読書レビューが滞ってるので2ついきます。まず浅井リョウの「スペードの3」は女優つかさのファンクラブを仕切る美智代、新たに入会したアキ、つかさの3人を描いた3章からなる作品。子供の頃に学級委員だった美智代は職場では地味ながらファンクラブを仕切ることで優越感を得ていたけれど、アキの加入で構図が崩れ、美智代の同級生だったアキは小学生の頃の劣等感を払拭する為、同じ小学校出身者がいない中学校で自分を変えようと努力。ファン憧れのつかさ様も実は才能の限界を自覚し、ヒロイン気質の同期生である円を妬み、円のそれが演技だと見抜いていたという女性のいやらしさ満載のお話。浅井リョウって男性で当時まだ20代でよく女性心理を見抜いてるなと感心。
西加奈子の「ふくわらい」も特殊な環境で育ったため愛情も友情も知らないフシギちゃんな編集者の定を描いて、前半はえぐいなぁと思ってました。「スペードの3」の女たちが本音を隠して社会に溶け込もうとしているのに対して、自分が浮いていても他者との交わり方がわからない定は疎外感を感じることがないのはある意味強い。それが担当する作家や同僚、街でであった男性とふれあうことで居場所を獲得していく様子に後半ぐっと来ました。強面のレスラー守口がいつか猪木さんになれると思っていたけど、自分は猪木には慣れないと悟った、自分が嫌だと告白する場面は圧巻。生まれた時から差がついていて、自然にうまく出来る人間がいる。勿論天才は努力し続けるからこそ才能を発揮する訳だけど、努力すれば誰もが天才になれる訳ではない現実。それは円との差を痛感するつかさ様も同じだし、人間関係の違和感は「風が強く吹いている」でいつも自分だけ浮いてる気f0119179_2373217.jpgがする、走ってる時だけは自分を演じる必要がないと独白するキングにも通じる思い。でも文字と文字がつながって言葉になるように、人と交わって来たことで構成されてる自分がいて、いろんな経験を重ねたその先っちょに今の自分がいる。だから2人で長生きしようね、と同僚のしずく。すごい作品でした。元ディレクターOさんが西加奈子はすごいとおっしゃってた意味が終盤漸く分かりました。
by mmcmp | 2019-07-09 02:54 | カフェ読書 | Comments(0)

「満願」

f0119179_16431231.jpg米澤穂信の「満願」を読みました。これも「ヒロ」で元テレビディレクターOさんに頂いたものですが、「羊と鋼の森」とは逆にどうも好きになれなかったです。6つのミステリー短編からなり、どれもそれなりに読み応えがあるけど、肝心のところがご都合主義というのか、腑に落ちない。
柳岡巡査長が同じ交番に勤務していた川藤巡査の殉職を綴る「夜景」。刃物を振り回す男に発砲した川藤が意図していたことが出来すぎていて、えー??という感じ。ただ、これを読んだ後で自衛官が交番にいた警官から銃を奪って発砲した事件があって、妙に怖かった。事故が頻発する峠を取材することになったライターが休憩したドライブインで店主のおばあさんに話を聞く「関守」は、オカルトテイストで不思議な話として終わるのかと思いきや、怖いのは人間だったという現実的な結末。表題作「満願」は弁護士が司法試験の勉強中に世話になった下宿の女性の借金を取立てに来た男の殺害事件を振り返る内容。正当防衛を主張したものの、あれは本当に正当防衛だったのか・・という疑問。真相に迫る推理は状況証拠としては辻褄が合うんだけど、それが起こる確率ってどれだけあるんでしょ、まして素人の女性がそこまで考えるかなぁ。どの短編もそんな感じなんですよね。バングラデシュで天然ガス資源の開発に関わる商社マンが遭遇した事件を追う「万灯」、読み終わって、あれ、これ前に読んだ気がする、「ストーリーセラーアネックス」に違いないと確認したら、やっぱりそうでした。でも最後の結末を読むまで、全く気づきませんでした。
by mmcmp | 2018-07-17 17:31 | カフェ読書 | Comments(0)

「午後の曳航」

f0119179_2248210.jpg首都圏の大雪に草津白根山の3000年ぶりの噴火。自然のスゴさを思い知らされますね。明日の京都は最高気温2度だって。思いやられます。
さて昨年ですが、三島由紀夫の「午後の曳航」を読みました。三島って10代の頃に「潮騒」を読んだような、漫画だけだったような・・・という今まで殆ど未読の作家だったけど、すっごいハマって楽しかった。久々に「本物の純文学」を読んだ気がする。マドロス演歌が流れてくる様な世俗的な設定を装いながら、格調高く完成度の高い文章。子供たちに潜む未熟さ故の残酷性を読む者に緊張を強いる流れで突きつけていく見事な構成。こういう作品を書く作家って今でいうと誰になるのかな? いないかも。 「現在のベストセラー本は『離乳食』と林修先生が言ったのも納得です。船乗りの竜二に憧れていた登にとって、母との結婚によって世俗的な陸の生活に馴染んでいく竜二は許しがたく、文庫本の裏表紙には「自分達の未来の姿を死刑に処すことで大人の世界に反撃する」と書かれています。昭和38年頃の横浜のエキゾチックさが、作品世界をより魅惑的なものにしていました。幼い頃に親に連れられて歩いた横浜って、まだこんな感じが残っていたなぁ・・・と。
by mmcmp | 2018-01-23 23:47 | カフェ読書 | Comments(0)

「霧の果て~神谷玄次郎捕物控」

f0119179_21594220.jpg藤沢周平の「霧の果て」を読みました。主人公の神谷玄次郎は腕利きの同心ながら、料理屋の二階にしょっちゅう入り浸って見回りもさぼりがち。でも根っからいい加減な訳じゃないんですね。同心として真面目にコツコツと仕事をして来た父親が、ある事件の為に妻と娘を殺され、上役からは探索に待ったがかかって、事件は藪の中。圧力をかけて来たのは、どうやらかなり身分の高い人物らしい。玄次郎が自堕落なのは、父を見捨てた奉行所に対する不信感が根底にあって、謹直だった父への労わりも混じって実直に働くことへの反発がある。単なる自堕落者とは違います。
最初の「針の光」で、かつてのあいつが再び現れたと言うから、父の事件に関わっていくのかと思ったら、あっさり犯人が捕まって終わったので、あれ?と思ったけど、基本は1話ごとに事件は解決。後半に父の事件の新たな手がかりが少しずつ得られ、終盤に大きく動いて、ラストの「霧の果て」で決着。藤沢作品には色んなキャラの主人公が登場しますが、どの人物も魅力的だし、テンポがあって読んでて楽しく、ハズレなし。でも父が関わった事件の真相は、わかってみれば玄次郎にとっては虚しいもので、霧が晴れたのに心は晴れないという。この後、彼は同心を続けるのか、いや、お津世と一緒になって料理屋の主人に転身するのかも。結末の後も気になる一冊でした。
by mmcmp | 2015-12-27 23:39 | カフェ読書 | Comments(0)

「ランプコントロール」

f0119179_234026.jpg気づいてすぐ訂正しましたが、前回の記事、アップした当初「パ・マル」のシェフの名前が間違ってました。日付が変わる前に更新しようと焦るとロクなことがないですね。正しくは高橋徳男さん。山本益博さんがこんな紹介記事を書いておられました
さて、大崎善生の「ランプコントロール」を読みました。「パイロットフィッシュ」など透明感のある大崎作品が大好きなモモ母ですが、近作はイマイチ、大崎さんはノンフィクションの方が間違いがないかも・・・と思っていました。でも、相変わらず主人公の男性は出版社勤務で中央線沿線に住むパターンが繰り返されてるけど、これは久々に良かった。ドイツ出向を命じられ、恋人と別れて機上の人となった直人。3年ぶりに帰国する所から物語は始まり、前半は恋人への思いをひきずりながらのドイツでの生活が綴られます。日本人の男性3人で家をシェアしての共同生活。だらだらとした青春の終焉の様な毎日を直人はブレーメンの音楽隊だと言います。「あれって、結末はどうなるんだっけ?」と誰もがうろ覚えのストーリー。ブレーメンにはたどり着かなかったけれど、それが良いんだよね、どんなに年老いても夢をみることに救いがあって、道を歩くにつれて希望が膨らんで行く。僕たちは共同生活をしながらブレーメンを目指していたのかも知れない。自分が年老いて衰弱した時、あの頃は楽しかったと真っ先に思い出すのがフランクフルトでの共同生活なのではないかと直人は思う。うん、モモ母が思い出すのも日本での暮らしから離れたボストンでの3ケ月かも・・と思う。で、後半は日本で恋人と予期せぬ形で再会することに。まさかラストはこうならないよね・・と思ったら、あ~やっぱりこうしちゃいましたか・・・という結末。森絵都の「この女」等に比べると陳腐な印象で終わるのが残念ですが、前半の大沢ワールドは本当に楽しかった。モモ母もブレーメンの音楽隊に入りたかったです。
by mmcmp | 2015-02-17 23:45 | カフェ読書 | Comments(0)

「初恋温泉」

f0119179_10463393.png春に大量の文庫本を送って下さった元テレビディレクターOさんが、「みをつくし料理帖」の続きを送るまでのつなぎにと数冊の本を送ってくださいました。その中からまず読んだのは、吉田修一の「初恋温泉」。実際の温泉地を舞台にしたオムニバス形式の短編集です。
上質な時代小説「凶刃」を読んだ直後だったので、最初の表題作はなんか現代人の薄っぺらさが際立ってあまり好きになれなかったんですが、続く青荷温泉を舞台にした「白雪温泉」は自ら脇役キャラを自認する主人公カップルが前作以上に軽いんだけど、しっとりしたラストが印象的で、一番好きな作品でした。不倫カップルを描いた「ためらいの湯」の舞台は京都の旅館「畑中」。漸く予約の取れたホテルに一人で来ることになった夫を描いた「風来温泉」は那須の「二期倶楽部」。器が立派なだけに、宿泊者たちのシチュエーションの不安定さが、読む者を落ち着かなくさせます。そして最後は高校生活カップルが親に内緒で黒川温泉「南城苑」に来ちゃった「初恋温泉」。健二は「この先、真希以外の女と、温泉に来ることなど想像も出来ない、この気持ちがいつかなくなるなんて、いくら考えても想像できなかった」けれど、やがては先の章に描かれた大人達の様な状況が待っていたりするワケですよね。それでも初々しいカップルで締めくくられているのは、ハッピーエンド。そういえば温泉なんて随分行ってないなと、読みながら気づいたモモ母でした。
by mmcmp | 2014-11-09 11:23 | カフェ読書 | Comments(0)

「凶刃~用心棒日月抄」

f0119179_22391579.jpg藤沢周平の「凶刃」を読みました。終わるのが勿体なくて未読だった「用心棒日月抄」の第四作。手持ちの「みをつくし料理帖」シリーズを読んだら、次は絶対これを読もうと決めていました。第三作「刺客」から16年の歳月が流れた、後日談の様な最終話で、これまでは短編連作で構成されていましたが、これは長編。相変わらず読み応えがあって、緊迫した場面など、ページを追うのもドキドキものでした。同じ時代小説でも魅力的な作品ながら若さゆえの脇の甘さが垣間見える高田郁の後に読むと、藤沢周平の成熟した筆致に心底感服します。
主人公の又八郎は今回も密命を帯びて江戸に赴くものの、若き日の様に脱藩した浪人ではなく、藩士として仕事をしている組織人。再会した口入屋吉蔵や細谷の姿に、気ままな用心棒暮らしをしていた日々がもう二度と戻らない遠い過去となった現実をみせつけられ、彼自身もう若くないことを自覚している。川本三郎の解説は「青春の終わりの確認である」と書いています。それは読むモモ母の周囲の人達の近年の零落や老いとも重なるところがあって、主人公の心情は一層リアル。今の様に数時間で東京に行ける時代と違って、終盤の二度と会うことのない別れが近づく場面の切なさは、胸に迫りました。でも、ちゃんと笑顔になれる結末が用意されていて、読後感は爽やか。ほんとに藤沢周平って良いなぁ・・・。
by mmcmp | 2014-10-26 23:28 | カフェ読書 | Comments(0)

「陰翳礼讃」

f0119179_1149574.jpg終わってしまうのが寂しくて「みをつくし料理帖」シリーズのインターバルに谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を読みました。学生の頃に読んだ時は厠と蒔絵の話しか印象に残ってないのですが、紙や食器、日本座敷から羊羹の色、歌舞伎に至るまで様々な日本の美を考察しています。特に西洋人との肌の違いに集約しているところが興味深い。薄明りの中で判然としない女性の曖昧さに日本女性の美しさがあると言うのは御簾の中で源氏を待つ姫君を思わせます。そして、日本は変わったなとも思い知らされます。先日、論語塾を主宰するNさんが「日本人は西洋人は自然を征服することを目指し、東洋人は自然と共生することを目指したが、現代の日本人は自然をたくさん破壊してきた」とおっしゃってましたが、闇との調和に東洋人が美を見出すとする谷崎の視点に通じます。折しも広島の災害の後だったこともあり、日本人が失くしたものの大きさを痛感します。でもね、谷崎先生、病院はやっぱり明るい方が良い。暗さは薬の匂いが漂う診察室や寒々とした廊下、感染症になりそうな病室を思い出させます。真っ白な病室は良くないと温かみのある色調になった今の施設に心地よさを感じます。
「旅のいろいろ」も興味深い。著書の中に自分が好んで行く所が何処か具体的に明かさないドイツ人旅行家。その土地が世間に知れると、都会の客が押し寄せて、地元でも色んな宣伝をする結果、本来の特色が失われるからで、食通にも同様の人が多い。そういう店はチマチマと商売してるうちが良いので、繁盛し出すと直に増築などして外観が立派になる代わりに材料を落としたり、料理の手を抜いたり、サービスがぞんざいになるので、こっそり行く方が自分もいつまでも楽しめ、店をスポイルすることがない。谷崎自身もこうした人の心掛けを学んでいると。この作品は昭和10年に書かれたそうで、当時も今もおんなじですね。スポイルとはよく言ったものです。でも、貸切状態で透き通る様な浜を満喫できる瀬戸内海の某島は、今はもうそんな風ではないんだろうな・・・。
by mmcmp | 2014-09-21 12:46 | カフェ読書 | Comments(0)

「終末のフール」

f0119179_2323719.png更新が滞ってスミマセンでした。かなり前になるんですが、伊坂幸太郎の「終末のフール」を読みました。舞台は8年後に小惑星が衝突して地球が滅亡すると予告されてから5年が過ぎた仙台の団地。滅亡まであと3年と言う設定は都合が良い。予告直後はパニック状態だし、滅亡直前だと再び混乱してる。パニックは一段落して、ある種の諦めから見かけは平穏さを取戻しているので、読者の生活に近い、でも確実に違う世界が描かれています。8つの章はそれぞれ「終末のフール」「太陽のシール」「籠城のビール」という具合に「○○の○ール」と題されています。主人公はそれぞれ別人だけど、別の章にも登場する。伊坂幸太郎って「フィッシュストーリー」とこれしか読んだことないけど、こうした仕掛けが好きな作家なんですね。遊びがあるのは面白いけど、ちょっと先が読めてしまいます。
モモ母が印象に残っているのは「冬眠のガール」。主人公は滅亡騒ぎに疲れて両親が自殺した23歳の美智。物語は父が残した書斎の本を全て読破したところから始まります。この作品を読んでいた頃、モモ母は父が借りていたマンションを退去して、父の大量の蔵書をトランクルームに移動させ、この本、きっと自分は全部読まないだろうけど、いつか読む気になったら、きっと一生分の本があるなと思っていたので、何となくリンクした感がある。親の自分に対する行為を理解できなかったり、どうして?と聞いてみたいけど、確かめられず引きずったりすることってあるよね。美智がアドバイスを求めに行った小松崎さんのキャラもかなり不思議で面白い。でも、人間って地球が滅亡するくらいの危機がないと決断出来なかったり、行動に移せなかったりする面倒くさい生き物なんですね・・。
by mmcmp | 2014-05-21 23:42 | カフェ読書 | Comments(0)

「お艶殺し」

f0119179_16394632.jpg谷崎潤一郎の「お艶殺し」を読みました。谷崎が好きなので、時々ふと読みたくなります。大好きな「細雪」なんかもじっくり読んでみたいのですが、全集を持ち歩くのは重いのと、全集の似合うカフェって少ない気がして、手軽な文庫本を読んでいます。
中公文庫には表題作と「金色の死」の2作が収められています。「お艶殺し」は奉公先の一人娘と駆落ちしてから人を何人もあやめ、転落していく新助と芸者になって変貌していくお艶との顛末を描いた作品。ヒロインの変貌に翻弄される男といった「痴人の愛」に通じる世界で、江戸らしい風情を漂わせているものの、「痴人の愛」への習作いった印象でした。続く「金色の死」は作家と少年時代からの友人である岡村との微妙な関係、彼らが展開する芸術論とや岡村の最期を作家が回顧する形で書かれています。華々しく文壇に登場した人気作家は谷崎自身を思わせ、芸術は人間の肉体美から生まれると身体の鍛錬に励む岡村は何となく三島を思わせると思っていたら、この作品を後の谷崎は嫌って全集にも収録しなかったのを、三島が谷崎の没後に発掘したんだそうです。絵画や彫刻は色彩や形態のみの効果によって観る人の頭に直覚されるべきもので、作品の背景にある歴史や知識は無用という岡村と、歴史を知っていれば余計興味が増すという私。これってモモ母もよく思うこと。例えば曾我蕭白が描く竹林の七賢とか寒山拾得を観た時、彼らのことをもっと知っていたら見方が深くなるんだろうな・・と思ったんだけど、反面、直感的に美しいと思えばそれで良いのだとも思う。いずれにしても全く違う空気の2作に谷崎の力感じました。
by mmcmp | 2013-09-26 17:26 | カフェ読書 | Comments(2)