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「将棋の子」

f0119179_23121915.jpg元テレビディレクターOさんからオススメ本を送ったと連絡。早速届きました。「あの家に暮らす四人の女」もあって楽しみ★溜まってるレビューを書かないと・・・。という訳で、年末年始に大崎善生の「将棋の子」を読みました。プロ棋士を目指す「奨励会」の若者たちとその後を描いたノンフィクション。地方では大人を次々負かして注目された天才少年も、そんな人ばかり集まって来る奨励会では大勢の一人。昇段には年齢制限があって、夢破れて退会して行った者たち。大崎さんが将棋連盟で働いていた頃は高校に進学せず退路を断つ棋士も結構いて、他の世界を知らないまま30近くになって退会すると、そりゃ生きていくのは大変なワケです。
羽生善治がどうすごいかのかも初めて知りました。定石などの知識と研究の深さが最重要で、高度な技術を持つ者なら誰が指しても同じになるというのが羽生理論。以後、坂田三吉みたいな無頼派はいなくなり、メインで描かれる成田英二のように敢えて定石を勉強しない棋士は、もはや通用しない。医師から一時退院を許された余命わずかの母と奨励会を辞めた成田が、お正月にマンションで過ごす場面は切なかった。三浦しをんが「風が強く吹いている」を執筆したのは「努力神話について考えたかった、報われなかったのは頑張らなかったからだという考え方に納得がいかない」からだそうで、それは「将棋の子」にも通じると思うのですが、風強が一年間だけを描いたフィクションなのに対し、これはシビアな現実が何年も続いてf0119179_063642.jpgキツイ。それでも将棋がその後も彼らの大きな支えになっているのが救われます。藤井聡太七段の登場は、また将棋界を大きく変えるんだろうな。この本を読んだおかげで、棋士を見る目が変わりました。
by mmcmp | 2019-01-18 23:50 | カフェ読書 | Comments(0)

「聖の青春」

f0119179_05284.jpg大崎善生は好きな作家の一人だけど、どうも最近の作品は読んで失望することが多く、それなら初期の出世作をと未読だった「聖の青春」を読みました。棋士・村山聖の一生を描いたノンフィクション。大崎氏のノンフィクションは「ドナウよ、静かに流れよ」も共感するかどうかは別にして、なかなか読みごたえがあったので、これも面白いのではないかと。読んでみると期待以上でした。結構分厚い本なんですが、将棋は門外漢のモモ母もどんどん引き込まれて行きました。
幼い頃からネフローゼという重い腎臓病で入院を繰り返し、病室で出会った将棋に魅せられ、17歳でプロ入り。名人を夢見ながら、将棋界最高峰A級に在籍したまま29歳で亡くなった村山聖。いわゆる羽生世代の一人だそうですが、存命中は彼のことを知りませんでした。読みながら感じるのは、大崎氏の優しい眼差し。故人の心情は実際はわからないし、フィクションの要素も多分にあるんですが、それゆえに村山は昇華され、彼の本質が描き出されているようです。ネフローゼでむくんだ風貌ゆえ肉丸君とか怪童などと呼ばれ、八段になっても漫画や推理小説、CDに埋め尽くされたゴミ屋敷の様なアパートで暮らし、誰にでも本音で話し、20歳をこえても母親にわがままを言う。実際の彼に会うと、そうした表面だけとらえて、ちょっと苦手に思うかも。でもボサボサ頭でなかなか散髪しなかったのは、子供の頃から死が身近にあった彼の無常観からだったりして、この作品を通して、文字通り命懸けで将棋を指した彼の本質に触れられて良かったと思います。大阪で師匠と過ごした単調だけど楽しい日々が愛おしい。大崎さん、こういうのが読みたかったんです。これからもこういうのをお願いします!
by mmcmp | 2013-11-20 01:30 | カフェ読書 | Comments(0)