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「満願」

f0119179_16431231.jpg米澤穂信の「満願」を読みました。これも「ヒロ」で元テレビディレクターOさんに頂いたものですが、「羊と鋼の森」とは逆にどうも好きになれなかったです。6つのミステリー短編からなり、どれもそれなりに読み応えがあるけど、肝心のところがご都合主義というのか、腑に落ちない。
柳岡巡査長が同じ交番に勤務していた川藤巡査の殉職を綴る「夜景」。刃物を振り回す男に発砲した川藤が意図していたことが出来すぎていて、えー??という感じ。ただ、これを読んだ後で自衛官が交番にいた警官から銃を奪って発砲した事件があって、妙に怖かった。事故が頻発する峠を取材することになったライターが休憩したドライブインで店主のおばあさんに話を聞く「関守」は、オカルトテイストで不思議な話として終わるのかと思いきや、怖いのは人間だったという現実的な結末。表題作「満願」は弁護士が司法試験の勉強中に世話になった下宿の女性の借金を取立てに来た男の殺害事件を振り返る内容。正当防衛を主張したものの、あれは本当に正当防衛だったのか・・という疑問。真相に迫る推理は状況証拠としては辻褄が合うんだけど、それが起こる確率ってどれだけあるんでしょ、まして素人の女性がそこまで考えるかなぁ。どの短編もそんな感じなんですよね。バングラデシュで天然ガス資源の開発に関わる商社マンが遭遇した事件を追う「万灯」、読み終わって、あれ、これ前に読んだ気がする、「ストーリーセラーアネックス」に違いないと確認したら、やっぱりそうでした。でも最後の結末を読むまで、全く気づきませんでした。
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by mmcmp | 2018-07-17 17:31 | カフェ読書 | Comments(0)

「仮面の告白」&「細雪 上巻」

f0119179_228393.jpg三島由紀夫の「仮面の告白」を読みました。昨年読んだ「午後の曳航」がすごく良かったから他の作品を読みたくなったんですが、これは合わなかったですね~。祖母に溺愛され、祖母が選んだ女の子とだけ遊んでいた子供時代など自伝的な要素が強く、当時としてはセンセーショナルだった同性愛的な志向を描くなど、文学的な意義はわかります。でも、作家の若さが読んでてちょっとしんどかったです。「聖セバスチャンの殉教」の絵画って、なんでこんな残酷な場面を描くかなぁと思いながら、つい怖いものみたさで見てしまう感じがありますが、ゲイの象徴になってたとは初めて知りました。
続いて谷崎潤一郎の「細雪」の再読を始めました。natsunoさんが「細雪」を読まれた記事を読み、自分も読んでみようと思ったのでした。「仮面の告白」と時代背景や発表年代が近いのに全然印象が違って、戦時色を全く感じさせない小説です。軍部から雑誌掲載や私家版の配布を禁じられてたにも関わらず、執筆を続けた執念。今、読むと学生時代とは違う感慨がありました。描かれた関西の生活文化は子供の頃、こういう感じの人たちっていたなぁ、こんな会話いかにも言いそう・・という懐かしさ。魚は鯛、花は桜と言って毎年同じ場所へのお花見をf0119179_2323245.jpg繰り返す、育ちの良さを感じさせるおっとりした感じ。多分、学生時代はまだそんな世界が身近に残ってたから、普通に読んでたんでしょうね。渋谷の風景も「春の小川」の河骨川があった頃ののどかさがあって興味深い。詳細はすっかり忘れてたけど、次女幸子の娘の悦子が路上の鼠の死骸を異様に恐れる場面だけは印象に残っていて、ああ、これは上巻にあったエピソードだったんですね。やっぱりモモ母は谷崎が好き☆
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by mmcmp | 2018-04-24 23:31 | カフェ読書 | Comments(0)

「風雪の檻~獄医立花登手控え(二)」

f0119179_22275315.jpgかなり前ですが、藤沢周平の「風雪の檻」を読ました。「春秋の檻」に続く獄医立花登手控えの第二弾短編集です。登は起倒流の柔術の使い手という設定。牢獄の罪人達の怪我や病を治療する獄医としての仕事には前巻より随分慣れた様子だけど、第一話「老賊」の冒頭から柔道仲間の新谷弥助がこのところ道場に姿を見せていないことが語られ、不穏な幕開け。続く「幻の女」は一度は賭場から足を洗った巳之吉が、昔のつきあいから男二人を殺傷、彼が島送りになる前におこまという女性を探そうとした登だけど、その消息は喜ばしいものでなく、巳之吉に知らせることが良いのか、事実を知らないままの方が幸せなのか。こういう設定がいかにも藤沢周平らしい。
「押し込み」は義賊を気取って押し込み強盗を企てた源次たちだったけれど、同じ店を本職の盗人が狙っているのがわかる。しかもかなりの悪党たち。登はやめさせようとするのに弥助に加勢を頼む。「処刑の日」は限られた時間の中で真犯人を追う緊迫感がエンタメ性抜群で面白い。今回も読み応え十分でした。今回、居候先の娘おちえと登の関係に微妙な変化があるのが興味深い。「春秋の檻」のおちえは派手に遊ぶ我が儘娘で、「登」と呼び捨てにしていたのに、誘拐されて懲りたのか「風雪の檻」では随分しおらしくなって「登にいさん」と呼びように。そしてラストは登本人も驚くような展開に。微笑ましいエピソードだけど、ウブで真面目な登に元ヤンのおちえは手に負えないと思うけどなぁ。次巻が気になります。
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by mmcmp | 2018-04-08 23:51 | カフェ読書 | Comments(0)

「トリップ」

f0119179_2253429.jpg6日に予定されている財務省の調査報告が、いつの間にか「調査方針の報告」になってました。清水潔さんが若い人に向けたtweetをしてましたが、今までなかった異常事態が続いています。月曜は古賀茂明さんの記事にゾッとしました。着任早々「しゃこたん」発言をした福井さん、温泉豪遊のハレンチ写真が話題になってたけど、こういう報道弾圧をしてきた人を沖縄・北方担当に任命するのが安倍さんなんですね。
さて、角田光代の「トリップ」を読みました。と言っても、読了は1月なのですが、東京近郊の街に暮らす普通の人たちの日常を描いた連作で、1作目は駆け落ちに失敗した高校生の話で、それ以降は前作にモブで登場していた人が次の作品の主人公になっていくスタイル。前作では影が薄かったのに、この人、本音ではこんなこと思ってたのねという面白さ。そりゃ肉屋に嫁いだ主婦だって古本屋でバイトする独身女性だって、一人一人いろんなことを毎日考えてるし、秘密を抱えてるよね。ただ、この本の前にサリンジャーの「フラニーとズーイ」を読んでいたせいもあるのではないかと思うのですが、読みながら登場人物たちの苛立ちや不安定感が伝染してきて、何となくそこで生き続けるって大変だよねと思い、背表紙に書かれた「透明感のある文体で描く珠玉の連作小説」という表現には同意出来ませんでした。
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by mmcmp | 2018-03-06 00:26 | カフェ読書 | Comments(0)

「鏡花短編集」

f0119179_1471784.jpg「鏡花短編集」を読みました。父の蔵書の1冊で硫酸紙のブックカバーがかかっています。もしかして、北大路駅を「烏丸車庫」と言ってた時代に北大路通りにあった文房具店「三星堂」で買った硫酸紙かも。9つの作品が収められていて泉鏡花の妖しく美しい世界を堪能しました。
最初は有名な「竜潭譚」。見渡す限り紅の躑躅(ツツジ)の花という極彩色な導入から鎮守の社を経て、少年が迷い込んだ夢ともうつつとも知れない世界。いわゆる「神隠し」を語ったもので、続く「薬草取」と共に幻想的な描写に魅了されます。他の作品にも躑躅が頻繁に出てくるなど植物に関する記述が多く、毒虫にやられて倒れたり、河童が出てきたりと動植物との接点が多かった頃ゆえに、今とは比べ物にならないほど魔物の遭遇話が身近だったのだと思ってみたり。面白かったのが「二、三羽---十二、三羽」。最初は自宅にやってくる雀を綴ったやや退屈な随筆かと思っていたら、後半かなりスリリングな展開に。暴風雨の後、訪れたはずの家が消えていた、という「雀のお宿」のような話。「暴風雨」には「あらし」とルビがふられていました。ちなみに「莞爾」と書いて「にっこり」と読むのを初めて知りました。余談ですが、泉鏡花といえば「神楽坂怪奇譚『棲』」、大好きな池田昌子さんの朗読が生で聴けるなんてすっごい貴重、日帰りで観に行こうかと思っていたのに、池田さん出演日は速攻で売り切れてました。しかし予告動画、観ただけで怪しそうです。
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by mmcmp | 2018-02-21 02:46 | カフェ読書 | Comments(0)

「しずかな日々」&「るり姉」

f0119179_111371.jpg椰月美智子の「しずかな日々」を読みました。アマゾンの「ポプラの秋」の関連紹介にあって興味を持ったのでした。三島由紀夫とは対照的な「離乳食のような本」だけど、児童文学なので平易なのは当然ですね。母親と離れておじいさんの家で過ごすことになったぼくの小学校5年の新学期から夏休みを綴ったもので、波乱万丈ではなく「しずかな」だけど、それまで友達と無縁だった無口な少年が、押野君と友達になったことで一緒に自転車で知らない町まで工場を見に行ったり、友達が家に泊まりに来たり、寧ろワクワクする幸福な記憶を読者が共有する感じ。お調子者で人気がある押野君みたいな子っていたなぁ。それにしても、この作品にはいじめが全く出て来ない。「えだいち」という呼び名だって学級委員選挙で枝田君はたった1票だったからだし、運動神経ゼロで空き地で野球をしても全然ダメだけど、陰湿な嫌がらせや悪口を言われることなく、そのまんま受け入れられてるんですよね。
「るり姉」も一緒に買ってみました。三姉妹が慕う母の妹「るり姉」と家族のことを綴っていて、高校生の長女さつきが夏、母のけい子がその春、次女のみやこが去年の冬、るり子の夫の開人が去年の秋、と各章ごとに話し手が変わり、最後の第五章は次女のみのりが4年後の春をf0119179_201453.jpg語る流れ。1章でるり姉が入院し、4年後は・・と心配をしながら4章を読み進める訳ですが、湯本香樹実ならこうはないだろうなという結末。椰月美智子が楽観的な作家なのかも知れませんが、児童文学は読んで元気になるのが良いんでしょうね。余談ですが、椰月さんのTwitterに小田急ブックメイツ新百合ヶ丘店の閉店のお知らせがリツイートされてました。行ったことはないけど、本屋さんの閉店はとても残念です。
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by mmcmp | 2018-02-07 02:07 | カフェ読書 | Comments(0)

「午後の曳航」

f0119179_2248210.jpg首都圏の大雪に草津白根山の3000年ぶりの噴火。自然のスゴさを思い知らされますね。明日の京都は最高気温2度だって。思いやられます。
さて昨年ですが、三島由紀夫の「午後の曳航」を読みました。三島って10代の頃に「潮騒」を読んだような、漫画だけだったような・・・という今まで殆ど未読の作家だったけど、すっごいハマって楽しかった。久々に「本物の純文学」を読んだ気がする。マドロス演歌が流れてくる様な世俗的な設定を装いながら、格調高く完成度の高い文章。子供たちに潜む未熟さ故の残酷性を読む者に緊張を強いる流れで突きつけていく見事な構成。こういう作品を書く作家って今でいうと誰になるのかな? いないかも。 「現在のベストセラー本は『離乳食』と林修先生が言ったのも納得です。船乗りの竜二に憧れていた登にとって、母との結婚によって世俗的な陸の生活に馴染んでいく竜二は許しがたく、文庫本の裏表紙には「自分達の未来の姿を死刑に処すことで大人の世界に反撃する」と書かれています。昭和38年頃の横浜のエキゾチックさが、作品世界をより魅惑的なものにしていました。幼い頃に親に連れられて歩いた横浜って、まだこんな感じが残っていたなぁ・・・と。
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by mmcmp | 2018-01-23 23:47 | カフェ読書 | Comments(0)

「春秋の檻~獄医立花登手控え(一)」

f0119179_012952.jpg5日から配信が始まった「DEVILMAN crybaby」のCMが登場、ナレーションを田中亮一さんが担当していて、テンション上がりました。(本編は多分見ないけど・・・) 亮一さんといえば、こんなツイートも。当時の亮一さんの授業、受けてみたかったです。
さて、年に最低一冊は読みたい藤沢周平の時代小説、昨年は「春秋の檻」を読みました。何だか腐女子向けの陵辱小説みたいなタイトルだね、と思ったけど、7つの短編からなる連作はどれも人情味あふれる良質な娯楽作品でした。主人公の立花登は牢獄に勤める青年医師。叔父の様な立派な医者になりたいとの志を抱いて江戸に出てきたのに、叔父はどうもやる気が感じられないし、居候先の年下の娘に呼び捨てにされたり、こき使われたり、正義感が強い主人公タイプながら、いまいち颯爽としてないところが良いですね。大好きな「用心棒日月抄」と共通する設定もあって、細谷の様な存在が柔道仲間の新谷弥助。今後もこのシリーズに出てくるんでしょうね。立花が獄中で出会った囚人たちの人間模様にジーンとしたり、7作目「牢破り」で叔父の娘のおちえが誘拐されてハラハラしたりで楽しめました。藤沢氏が江戸時代の医学史や経済関係の資料をとても深く読み込んでいるという佐藤雅美の解説も興味深い。シリーズ2作目も楽しみです。
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by mmcmp | 2018-01-06 00:26 | カフェ読書 | Comments(0)

「ポプラの秋」

f0119179_23434562.jpg高台寺の夜間拝観に続いて、週末は嵐山花灯路に行きました。帰りのJRの中から真っ赤な京都タワーが見えていたんですが、京都駅に着くとタワーの半分は緑色。クリスマスカラーだった様です。
先月、湯本香樹実の「ポプラの秋」を読みました。父を亡くした千秋と母が見知らぬ駅で郊外電車を降り、駅前商店街を抜けていくと住宅街の屋根の間から高い木が飛び出していて、高いところの葉っぱが風もないのにゆさゆさ揺れていた、その光景が目に浮かぶよう。庭にその木があることから「ポプラ荘」と呼ばれるアパートに引っ越した千秋と大家のおばあさん、アパートの住人との交流。天国に手紙を届けるというおばあさんの言葉を信じて、父に手紙を書き続ける千秋。湯本香樹実の作品は代表作「夏の庭」をはじめ子供と老人の交流、死の予感が繰り返し描かれていて、「夏の庭」や「西日の町」は好きだったけど、「岸辺の旅」は重くて苦手でした。この作家はやっぱり「夏の庭」が頂点だなと思っていたんですが、「ポプラの秋」はそれをこえるくらい好きな作品でした。とにかく昭和らしい風景と登場人物が懐かしく愛おしい。作家の年齢差f0119179_028329.jpgもあると思いますが、母子と周囲の人を描いた「漁港の肉子ちゃん」とは明らかに違うテイストです。ポプラ荘なんて名前の、日に焼けた畳や外に洗濯機が置かれたアパートがありそうな時代に子供時代を送った者には、こうした世界がもはや遠い記憶になりつつあること、平成から次の厳しい時代を生きていかねばならない、身近な人たちと別れて前に進まねばならない覚悟と相まって、妙に心に残る一冊となりました。
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by mmcmp | 2017-12-10 23:52 | カフェ読書 | Comments(0)

「つゆのあとさき」

f0119179_23442558.jpg季節外れなタイトルですが、永井荷風の「つゆのあとさき」を読みました。谷崎が絶賛した作品なので、谷崎で卒論を書いたモモ母としては学生時代に読んでおくべき作品なんですが、読んだのはこれが初めてです。
銀座のカフェーで女給として働く君江やパトロンの作家清岡や妻の鶴子、君江を取り巻く男性たちを通して1930年代の東京の風俗を描いたもの。ドンフワン、アルプスといったいかにもそれらしいカフェーの名前や茶の間にあった「到来物の羊羹」、入梅の空に「仁丹の広告」など、何気ない言葉が、今、読むと新鮮。到来物なんて言い方、久々に読んだ気がする。「急がないでもよう御座います」ってのも、いかにも東京人。下北沢のマンションの大家さんがこんな物言いしてたっけ・・と本編と関係ないところに反応しながら読んでいました。君江に嫌がらせをする清岡は今でいうストーカーみたいだったり、華やかさの裏に刹那的な欲望があったりで、「つゆのあとさき」という爽やかさなタイトルとは印象が違うと思ったら、当初は「夏の草」という仮題をつけていたそうです。この文庫本は父のもので、家には父の蔵書が山の様にあるけど、とても読みきれないし、荷風の作品を学生時代に読んでいた友人達とも読書量に雲泥の差がある訳で、今からどのくらいの本が読めるんだろうか、本だけでなく観た映画も読んだ漫画も圧倒的に少ない自分のキャパの少なさを思い知るこの頃です。読書と学力の関係について、「読書をしたから学力が高くなったのではなく、学力が高い子が本を読んでいるという可能性がある」と中室牧子さんが初耳学で解説してたのに、なるほど・・と目からウロコだったんですが、あの言葉に妙に納得する今日この頃です。
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by mmcmp | 2017-11-27 00:36 | カフェ読書 | Comments(0)